劇団だるま座とは





1996年8月 代表 剣持直明を中心とし、「東京ファールチップ」という劇団名で旗揚げをする。

2001年9月 自分達の作品発表スペース兼稽古場として、杉並区荻窪に「アトリエだるま座」を構え、
        一ヶ月に一度のペースで新作・再演を織り交ぜ発表する。

2005年3月 劇団名を「劇団だるま座」に改称する。

「笑っているのに涙が出る。
泣いているのに笑ってしまう。」


そんな、理屈ではない、人間の根底にある魂の部分を、
こちょこちょとくすぐるような芝居創りを旗印として活動を続けている、
身近で親しみやすい演劇を志す劇団です。


代表  剣持直明 座長  塚本一郎

東京・荻窪の仲通り商店街を拠点に
誰もが楽しめる芝居を目指す
劇団だるま座
                  (シアターガイド12月号掲載記事)
ここ数年、チェーン店ばかりが目立つ街が増え続ける中、地元の商店街が今もなお息づいている東京・荻窪。その商店街に拠点を置き、独自の芝居作りを続けている劇団がある。だるま座―― クリーニング屋のおばちゃんから学生、家族連れにいたるまで、誰もが楽しめる芝居を届けてきた、ユニークな劇団の活動を紹介する。

 東京・荻窪。この街の古くて小さな商店街の片隅に、劇団だるま座のアトリエがある。代表の剣持直明は、この場所を劇団の拠点に選んだ理由をこう語る。

「クリーニング屋に中華料理店に古書店まで、小さいけれど、それぞれに顔を持った商店が軒を連ねる中で芝居がしたかった。
人々の暮らしに近いところで、稽古もすれば公演もする。最大60名ほどの客席ではありますが、アトリエ=稽古場兼劇場にしたのはそのためなんです」 

剣持が劇団を立ち上げたのは1996年(当時の劇団名は東京ファールチップ)のこと。以来、この街で芝居を作り続けて14年。今では荻窪の人々が、だるま座の一番のファンだという。

「旗揚げ当初は見知らぬ連中が突然やって来たものだから、一体何者なのかと思われたみたいですが(笑)。僕たちが街になじむにつれて、街の人たちも芝居を観に来てくれるようになりました。今ではアトリエ以外での劇団公演、座員が客演している作品を観に来てくれる方たちもいますね」

 生活の延長線上にあって、しかも誰もが垣根なく楽しめる芝居を届けたい―― そう思い至ったのは、20代のころのある出来事がきっかけだった。

「当時、劇団希望舞台にいて、全国各地を回っていたのですが、ある時、屋久島で、わら半紙に書かれたお客さんからの感想を読んだんです。『わらってサー、ないてサー、ながいきするサー、ありがとうネー。80歳・漁業・女』と鉛筆で記されていました。俳優になったものの思ったように活躍できず、ストレスの塊だった僕にとって、これは衝撃的だった。演劇というものの力をあらためて実感するとともに、こんな素敵な言葉をもらえるのなら、そのために芝居をやろうと決めたんです」

 オリジナルや新作にはあえてこだわらない。
 旗揚げから今日まで、だるま座が上演してきた演目は、オリジナルから既存の作品までさまざま。チェーホフにロベール・トマ、水谷龍二、ONEOR8の田村孝裕の戯曲、さらに「エンタの神様」で活躍するピン芸人、快児作・演出のコントまで、実に幅広く、しかも再演が多いのが特徴だ。「オリジナルや新作にはあえてこだわらず、面白いものは何でもやるのがモットー。最初から再演を意識したことはなく、お客さんの声を聞くうちに、自然とこうなった」と座長の塚本一郎は語る。

 去る10月に座・高円寺で上演した『煙が目にしみる』も、そうしたレパートリーのひとつ。とある田舎町の斎場の待合室に、白装束姿の二人の男、北見(塚本)と野々村(金井節)が座っている。まもなく火葬される幽霊たちなのだが、現世に未練がある二人は、ボケているのに、なぜか自分たちの姿と言葉が分かる野々村の母(剣持)を通じて、遺した家族や恋人に最期の思いを伝えようとする……。

 数々の劇団によって上演されてきた演劇界のスタンダードといわれる名作だが、奇をてらわない演出と演技で、ごく普通の人々のささやかな秘密から騒動が巻き起こる、この作品の面白さを余すところなく表現する。丁寧に積み上げられたアンサンブル劇により観る者を登場人物すべてに共感させ、泣いたり、笑ったり、大いに楽しませる。代表作『桜散る、散るもつもるも三春乃一座』でも、それは同じだ。戦時下に生きる大衆演劇一座の姿を涙と笑いとともにつづったこの作品は、すでに9年も再演を重ねているという。

「面白かったからまた観たい、今度は家族に観せたい、と言われた時、その機会を作るのは僕らの役目。次々と新作を発表するよりも、一つの芝居をやって終わりにしないことで、演劇の可能性を広げられれば。荻窪だけでなく、いろいろな街にアトリエを作って、少しでも多くの人に演劇の楽しさを知ってもらうのが夢であり目標ですね」(剣持)。
 小劇場、新劇、大衆演劇……そのすべてに近いようで、どれにも当てはまらない「だるま座」。そのスタイルは懐かしくて新しい、未来につながる演劇の形なのかもしれない。

取材・文=宇田夏苗
(シアターガイド12月号掲載)